教育長ブログ

熊本市教育長(H29.4~) facebookの投稿から主なものを転載しています。 https://www.facebook.com/hiromichi.endo

こども家庭庁の発足:地方自治体も体制整備を進めよう

日本教育新聞に寄稿した記事を、許可を頂いて転載します。

本年4月1日、内閣府の外局として「こども家庭庁」が発足する。こども家庭庁には、これまで各省庁が別々に行ってきたこども政策の総合調整を担い、こどもの視点に立った政策の司令塔としての役割が期待されている。

他方、多くの政策を現場で実施する側の地方自治体では、それに対応する体制ができているだろうか。こども家庭庁の創設により、国の政策の一体性が高まったとしても、実務を担う自治体がこれまで通り縦割りのままであれば、その実効性は限られてしまう。

こども家庭庁の設置と同時に「こども基本法」も施行されるが、この法律によって、自治体には、地域におけるこどもの状況に応じた施策を策定・実施する責務が課される。

また、政府が作る「こども大綱」を勘案して、自治体の「こども計画」を定めることや、自治体による関係機関や民間団体の「有機的な連携の確保」も努力義務となる。

このように4月からは、どの自治体でも、首長部局と教育委員会の切れ目ない連携体制の構築が不可欠な状況である。まずは各自治体で「こども計画」を作るとなった場合、どの部局が担うのだろうか。この問いに即答できる自治体は、内部で最低限の体制はできているといえる。だが、そうでない場合には、自治体としての準備が十分ではないかもしれない。

さらに今後、こども家庭庁が(一部は文科省と連携・共同して)所管する業務である、幼稚園・保育所認定こども園の共通性の確保、いじめ・不登校対策、児童虐待防止対策、こどもの貧困対策などに関しては、自治体レベルでも、首長部局と教育委員会の連携を主導し、調整するための体制が求められるだろう。

なお、熊本市の場合には、こども家庭庁の発足に合わせて、4月から市長部局に「こども局」を創設することになっている。これは、福祉政策を担っている健康福祉局から、こども関係の部署が独立して創設されるものである。発足当初はまだ、こども家庭庁の業務全般に対応した組織とまではいえないが、教育委員会としても今後の体制整備に協力していきたい。

もちろん、こうした新しい部局の設置だけが、自治体側の体制整備の方法とは限らない。自治体によっては、こども家庭庁が所管する事務を、教育委員会が中心になって担うという方法もあるかもしれない。具体的な連携・調整の方法は、これから各自治体が試行錯誤しながらグッドプラクティスを創出していくしかないだろう。

これまでも、首長部局と教育委員会の政策調整の仕組みとして、首長が策定する教育大綱や、首長が招集する総合教育会議が存在している。しかしこれらは、計画や会議という、いわばフォーマルな連携の仕組みである。今後は、自治体の日々の業務の中で、より迅速かつ柔軟に、関係部局が連携できる体制づくりが必要である。

日本教育新聞 2023年1月9日付「提言」掲載)