教育長ブログ

熊本市教育長(H29.4~) facebookの投稿から主なものを転載しています。 https://www.facebook.com/hiromichi.endo

教育長だより ー いつの間にか今年も終わり

※月刊「日本教育」に寄稿した記事を、許可を得てブログに転載させて頂きます。

早いもので、今年ももう年の瀬が迫ってきた。つい最近2022年になったばかりのような気がするのに。年々、一年が経つのが速くなっている気がする。

では、一瞬にも思えるこの一年で、世界はどのくらい変わったのだろうか。試しに、今からちょうど一年前、2021年12月1日はどんな世界だったのかを見てみたい。その日、1ドルは112円、コロナの感染者は全国で119人だった。メディアには、日本大学の田中英寿理事長(当時)の辞任が臨時理事会で了承された、オミクロン株の国内2人目の感染者が確認された、ロシアがウクライナに侵攻すれば高い代償を払うことになるとNATOが警告した、といったニュースが並んでいる。

こうして見ると、一年前の出来事にも、今とは隔世の感があるものもあれば、今につながる兆候もあることがわかる。一年で世界は大きく変わったが、全く別物になったわけでもないようだ。来たる2023年もきっと、今とは違うようでもあり、今起きていることの延長線上でもある、そんな年になるのだろう。とはいえ、何がすぐに変わってしまい、何が後につながるのかは、結果論でしかわからない。予測することは困難である。

今の子どもたちは、このような世界、いや、恐らくもっと動きが速くなる世界を、何十年、あるいは百年以上、生きていくことになる。そう考えると、私たちが今から教えられることなど、わずかしかないと思い知らされる。百年後、彼ら彼女らがどこに住んでいるのか、円やドルというものが存在するのか、それすらも不確かな世界である。そんな中で私たちにできることは、将来にわたって自ら学べるようにしてあげること、それに尽きるのではないか。

「豊かな人生とよりよい社会を創造するために、自ら考え主体的に行動できる人を育む」というのが、熊本市教育振興基本計画の基本理念である。コロナ禍の一斉休校の直後に策定したこの基本理念は、これからの激動に時代にふさわしい指針であると改めて思う。来年も、この基本理念の実現に向けて全力を尽くしたい。

さて、こんなことを言いながら、実はこの原稿を書いているのは、10月である。この「教育長だより」は、原稿の締切から掲載までが約2か月と長いことが特徴なのだ。個人的には余裕があって有り難いが、例えば2か月後、教育関係者の間で何が話題になっているのか、コロナの状況はどうなのか、1ドルは何円なのかなど、想像もつかない。そんな中で2か月後の原稿を書くのは、意外と難しい。毎回、的外れな中身になってはいないかとヒヤヒヤしている。

しかし、今回は違う。10月の2か月後は、間違いなく12月である。今回の原稿だけは、2か月後のことを予測して、安心して書くことができた。

冗談はさておき、2023年は、せめて少しは落ち着いた年になってくれることを願いたい。また、毎回の「教育長だより」を読んでくださった皆様にお礼を申し上げ、今年最後の原稿の筆を置きたい。来年も1月号でお会いしましょう。

では、良いお年をお迎えください。

ー「日本教育」令和4年12月号掲載