教育長ブログ

文科省→起業→熊本市教育長

校則と民主主義

日本教育新聞に寄稿した記事を、許可を頂いて転載します。

 

校則見直しで学校管理規則改正 子どもも参画、学校を民主主義実践の場へ

■校則の何が問題か

 最近「ブラック校則」についての報道をよく見掛ける。確かに理不尽な校則は問題だが、そのような校則を、誰がどうやって見直すのかという問題にも、もっと注目してほしい。

 教師が一方的に決めた校則を、批判されたからといって教師が一方的に見直すのでは、問題の本質的な解決にはならない。校則が恣意的に決められていることに変わりはないからだ。

 学校は、「平和で民主的な国家及び社会の形成者」(教育基本法第1条)を育てる場である。ルールを自ら作り、自ら責任を持って守るのが民主主義の基本である。学校でそれを実践しなければ、いくら机上で民主主義を覚えても仕方ない。

■責任者は校長だが案は皆で

 ここで確認しておきたいのは、校則を決めるのは校長の権限であるということだ。もちろん教育委員会も学校の規則を決める権限を持つが、学校内で校則を決める責任者は校長である。

 その上で、校長が校則を決める際、誰がどのように参画するかについては、多くの場合、明文化されていない。そこで熊本市では、学校管理規則を改定し、校則の制定・改廃に、当事者である教職員、児童・生徒、保護者が参画することを明記した。校則を決めるのは校長であるが、案を作るのは皆でやるということだ。

■見直しに関するガイドライン策定

 併せて、校則見直しに関するガイドライン教育委員会会議で決定した。主な内容は、

(1) 教職員、児童・生徒、保護者が参画する校則見直しの協議を年1回以上行うこと
(2) 協議は当事者に必要な情報を提供しながら進めること
(3) 校長は協議の結果を尊重すること
(4) 協議の結果と異なる決定をする場合にはその理由を説明すること

などである。(2)(3)(4)は会議での教育委員の意見によって盛り込まれた。

■児童の権利条約

 校則制定プロセスの明文化は、児童の権利に関する条約に定める意見表明権(同条約第12条)とも整合的である。国連の児童の権利委員会は、学校の意思決定への児童の参加を法定すべきだとしている(同委員会一般的意見第12号・平成21年)。

 その点で、児童・生徒の参画を教育委員会規則という法的根拠のある形で規定したことには意義があると考えている。今後、ぜひ国でも法制化を検討していただきたい。

■民主主義の実践

 これらの学校管理規則等の制定は、当事者の参画を得ながら進めてきた。具体的には、

(1) 教職員、児童・生徒、保護者に対するアンケート
(2) 教職員、児童・生徒、保護者との意見交換会
(3) 校長会との協議
(4) 教育委員会会議での議論

である。

 こうしたプロセスは、今後の学校内の校則制定プロセスと同様にすることを意識した。学校管理規則等を決めるのは教育委員会の権限であるが、当事者の参画を得ながら案を作り、最終的な決定の理由は、ガイドラインやQ&Aといった形で説明した。

 今後、各学校でこうしたプロセスを経て校則が制定されるようになれば、児童・生徒のみならず全ての関係者にとって、学校が民主主義の実践の場となると考える。

(令和3年6月21日 日本教育新聞5面「提言」掲載)