教育長ブログ

熊本市教育長(H29.4~) facebookの投稿から主なものを転載しています。 https://www.facebook.com/hiromichi.endo

フリースクール等での学習成果:学校の成績評価への反映を迅速に

日本教育新聞に寄稿した記事を、許可を頂いて掲載します。

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・学校教育法施行規則の改正で変わる対応

 今年8月、学校教育法施行規則が改正され、不登校児童・生徒が自宅やフリースクール等で行った学習の成果について、一定の要件を満たす場合に、学校の成績評価に反映できることが明確化された。
 また、これに伴う文科省の告示と通知では、学習の計画・内容が学校の教育課程に照らし適切であること、学校・保護者・フリースクール等との間に十分な連携協力関係があること、学校が児童・生徒の状況を定期的・継続的に把握すること、などの要件が示された。

・狙いは学習意欲に応え自立を支援すること

 今後、各自治体・学校でこの省令に基づいた成績評価が具体的に運用されることになるが、その際に重要だと思われることを2点、提言したい。
 1点目は、この省令改正を、成績評価をしない理由にするような逆の解釈・運用をしないことである。
 すなわち、詳細な要件が示されたことで、これ以外の場合はダメなのだという誤解をしない、ということである。
 通知にもあるように、この省令改正の狙いは、欠席中の学習成果を学校として評価することで、児童・生徒の学習意欲に応え、自立を支援することである。
 また、自宅やフリースクール等での学習成果を成績に反映することは、これまでも校長の裁量でできたが、法令上「できる」と明確に書くことで、それを促進する趣旨である。
 そのため、この省令で示された場合以外でも、欠席中の学習成果を学校の成績に反映することは、引き続き校長の裁量で可能である。
 また、文科省の通知では「不登校児童生徒」という言い方をしているが、いわゆる「問題行動等調査」の「不登校」「病気」「その他」のうち「不登校」に限るという形式的な分類ではなく、実態に基づいて判断する必要があることを指摘しておきたい。

自治体は運用基準を明確に示そう!

 2点目は、児童・生徒や保護者、フリースクール等が、実際どのような学習成果が成績評価に反映されるのかが分かるよう、各自治体において明確な運用基準を示すことである。また、各学校でそれを円滑に運用できるよう支援することである。
 熊本市でも、学校によってフリースクール等での学習成果の反映状況に差があったことから、今年2月の各学校への通知で、評価計画、評価方法、評価材料等についてフリースクール等と共通理解を図ることや、評価材料の具体例(ワークシートやノート、動画、作成した成果物など)を示した。
 本年度から運用を始めたばかりであるが、実践を重ねながらさらにブラッシュアップしていきたい。
 文科省においても、各自治体・学校の参考となるよう、成績評価への具体的な反映方法や事例について、広く周知することが望まれる。
 現実問題として、学校での成績評価が最も大きく影響する場面は、入試である。本年度の入試に少しでも生かせるよう、各自治体・学校において一刻も早い取り組みが求められる。

日本教育新聞 2024年9月23日付「提言」掲載)