苫野一徳著『未来のきみを変える読書術』(筑摩書房)を読みました。
著者の苫野先生からご恵贈頂きました。「ちくまQブックス」という10代向けの新シリーズの、記念すべき第一弾となる作品です。
10代向けということで、たいへん読みやすく書かれています。しかし、言っていることの要求水準はとても高いです。大人になった今でもそこまでできていないな、という読書の仕方(質・量ともに)が書いてあるので、読み終わると、本が読みたくなる本でした。
この本で苫野先生は、読書に限らず、膨大な経験を積んだ結果として得られる「クモの巣電流流し」という現象について書いています。
将棋の一流棋士は、対戦中、次の最善の一手が瞬間的に閃くことがしばしばあるそうです。数学や物理学などの天才的な研究者も、問題を見た瞬間にその解き方がわかることがよくあると言います。(p.16)
慣れてくると、書棚を眺めているだけで、本のほうから呼びかけてくるなんてことも起こります。「ほら、ここにあなたが読みたがっているわたしがいるよ」なんて具合に。声が聞こえてくる。あるいはそこだけが光って見える、なんてことが起こるようになるのです。(p.65)
これは本当にそうなんですね。私も官僚時代から、毎日大量の文書を読んで修正することを繰り返してきた結果、今では仕事の文書を眺めただけで、間違っている箇所が光って見えます(笑)。そこだけ文章の流れが乱れているのが見えるんですね。それができても、一流棋士や天才研究者の閃きに比べると、大した役には立ちませんが…。
いずれにせよ、読書も着実に積み重ねることによって、確実に新しい世界が開ける。そうした展望を与えてくれる本です。