教育長ブログ

熊本市教育長(H29.4~) facebookの投稿から主なものを転載しています。 https://www.facebook.com/hiromichi.endo

清水剛著『感染症と経営ー戦前日本企業は「死の影」といかに向き合ったか』(中央経済社)を読みました。

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部活の先輩の清水さんの本です。なんて言ったら失礼ですね。経営学がご専門の清水剛東大教授のご著書です。

戦前の日本は、今よりはるかに死が身近な社会でした。特に感染症による死は多く、家族や友人・知人の誰かを感染症で亡くしているのは普通のことでした。そうした時代の企業の行動が、コロナ後の社会にも参考になるのではないか、という着眼点で書かれた本です。

主要なテーマは、死が身近な社会では個人と組織の関係はどうなるか、だといえます。死が身近にある社会、すなわち不確実性の高い社会では「組織に頼らず生きる」という生き方は、リスクが高くなります。もちろん組織にもリスクはありますが、個人に比べれば永続性・安定性に優れているからです(対感染症という観点では特にそうですね)。

そこで著者は「組織に頼らず生きる」よりも「組織に対するパワー(交渉力)を高める」という方向性を提唱しています。それが、組織に依存せず、かつ組織を利用して生きる方法となるわけです。その具体的なところは、ぜひ本書をお読み頂ければと思います。

私は経営や経済は専門ではありませんが、こういう風に理論を現実に当てはめて考えるんだな、という方法がよくわかる本でした。文章も簡潔ですんなり読めます。