教育長ブログ

文科省→起業→熊本市教育長。45歳。悪性リンパ腫サバイバー。

アンドレアス・シュライヒャー著『教育のワールドクラス 21世紀の学校システムをつくる』を読みました。

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9月にシュライヒャー局長をお招きした際にご本人から直接頂いたのですが、なかなか読めず、ようやく読み切りました。とても学びの多い本でした。

この本の強みは、書かれていることの多くが、OECDが長年積み重ねてきたPISA等のデータに裏付けられていることです。もちろん、PISAが教育のすべてを表しているわけではなく、本書の主張に「それは違う」と言うこともできます。しかし、その反論にも(客観的な)根拠がなければ、説得力を持たないというわけです。

本書に書かれている、PISAからの発見を少し挙げてみます。いくつかは納得の結果であり、いくつかは意外な結果であり、いくつかは「不都合な真実」かもしれません...。


・ある国の移民の背景を持つ生徒の割合と、その国の生徒全体の成績には関係がない。

・生徒一人当たりの教育投資が5万ドルを超えると、投資額と学習成果の質には相関関係がなくなる(教育投資を増やしても成績につながっていない)。

・教育のためにデジタルテクノロジーに多額の投資をした国々では、生徒の成績があまり改善されていない。

・成績上位の国は、クラス規模を小さくするより、教員の質や給与水準を優先している(日本はクラス規模が大きく、成績が良い国の代表例)。

・授業時間と学習時間が多い国は、PISAの成績が悪い(日本は学習時間が少なく成績が良い国の代表例)。

・西洋諸国の生徒は、良い成績は遺伝によると考える場合が多く、東アジアの生徒は、努力の結果だと考える場合が多い。

・生徒の金融リテラシーと、彼らがどれくらい金融教育を学んでいるかとの間には関係がない。

・国や地域が天然資源から得る富と、生徒の知識やスキルには負の相関がある(成績の良い国の多くは天然資源に恵まれていない)。

・都市の生徒は農村の生徒よりも(社会経済的背景の影響を除いても)成績がよい。


これらの結果は、金をかければ教育がよくなるわけではないことを示しています。ただしそれは、教育投資が無駄だということではなく、金額よりも投資の仕方が重要だというのが著者の解釈です。

これらの結果から短絡的に政策を決めることはできませんが、海外の事例を知った上で、その教訓に学びながら政策を考えることが大事であると再認識しました。