教育長ブログ

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小熊英二著『日本社会のしくみ』を読みました。

小熊英二著『日本社会のしくみ』を読みました。

新書でありながら、約600ページという大著です。日本型雇用について、例えば「終身雇用なんて大企業だけだよね」というイメージはあっても、実際はどうなっているのか。本書は、それを文献やデータで徹底的に検証していきます。そして、第1章から、「大企業型」が26%、「地元型」が36%、「残余型」が38%、とまで示されてしまうと、唸るしかありません。その後も、国際比較や歴史的な経緯など、徹底的に分析が続き、その姿勢に圧倒されます。

しかし、サブタイトルが「雇用・教育・福祉の歴史社会学」であるにも関わらず、教育や福祉については、「雇用慣行が全体を規定している」という、それこそ「イメージ」でしか語られていません。教育関係者としては、進学率のように就職と密接に関係する部分はともかく、教育全般が(例えば、学習指導要領やいじめ・不登校なども?)雇用慣行に規定されていると言われても、実証的な分析がなければ、とても納得できるものではありません。

「あとがき」によれば、当初は包括的な内容にするつもりが、雇用慣行に比重を置く内容に書き直したそうです。それならば素直に『日本型雇用のしくみ』というタイトルにすべきであったと思います。

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