教育長ブログ

文科省→起業→熊本市教育長

教育長だより ー 教育改革をやめたいですか?

※月刊「日本教育」に寄稿した記事を、許可を得てブログに転載させて頂きます。

 最近の教育改革の動きはあまりにも速すぎる、とお思いの方も多いのではないか。この2・3年間だけでも、新学習指導要領の実施に始まり、働き方改革GIGAスクール、教員免許更新制の廃止、小学校の35人学級、運動部活動の地域移行などなど、枚挙にいとまがない。これほど次々に新しいことが押し寄せてくると、「もう改革には疲れた」とか「立ち止まって考えよう」と言いたくなる気持ちも、わからなくはない。

 しかし、現在の制度では、教育改革は止まらない。そして、それには明確な理由がある。

 その理由とは、文部科学省設置法である。そこには文部科学省の所掌事務(やるべき仕事)が95個書かれているが、その1番目が「豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成のための教育改革に関すること」である。つまり文部科学省は「教育改革」をやりなさいと法律に書いてあり、勝手にやめるわけにはいかないのだ。

 かつての文部省時代にはそうした規定はなく、文部省が文部科学省になった時に、そのように決められた。もちろんこれは意図的なものである。文部科学省設置法が成立した1999年(平成11年)当時は「『ゆとり』の中で『生きる力』をはぐくむ」ことを目指した教育改革の真っ只中であったからだ。

 こうした教育改革を一時的なものにせず、常によりよい教育を目指して改革を続けていかなければならない。これが、法律案を作った当時の文部省幹部の意思であり、内閣の意思であり、法律を成立させた国会の意思、つまり国民の意思であった。

 実はこの点こそ、文部省と文部科学省の(科学技術が加わったことは別として)最大の違いだと個人的には思っている。実際に、21世紀に入る頃から「ずーっと教育改革が続いている」というのは、皆様も体感されているのではないだろうか。それもそのはずである。そう法律で決まっているのだから。しかしこの点は、法律の条文というマニアックな論点であるからか、これまでの教育改革をめぐる議論では、あまり注目されてこなかったように思う。

 なお、このように省庁の所掌事務の最初が「改革」である例は珍しく、他には経済産業省の「経済構造改革の推進に関すること」だけである。文部科学省経済産業省という二つの省は、なぜ(不要とも思える)改革をし続けるのか。それは、省が存在し続ける限り、永久運動として改革をし続けるよう、あらかじめプログラムされているからなのだ。

 ということは、もし教育改革をやめたいのであれば、本や論文で教育改革に反対したり、SNSに投稿したり、居酒屋で愚痴を言うだけでは十分ではない。国会で審議した上で、文部科学省設置法を改正しなければならない。

 と、ここまで書いた上で、改めて皆様に問いたい。「教育改革をやめたいですか?」と。今ほど教育改革が求められている時代はないのか、あるいは、これ以上の教育改革はするべきでないのか。もちろん、私の答えは明確である。

ー「日本教育」令和4年8月号掲載