これまで行政学的な分析がほとんど行われてこなかった文部科学省に関する研究ということで、たいへん興味深く、面白く読みました。
他省庁と比べて、総理や官邸への影響力が少ない、財務省に弱い、族議員や関係団体との内輪の付き合いが多い、という、日頃から関係者が漠然と持っている文科省のイメージが、データで浮き彫りになっています。本書も指摘する「三流官庁」論が、部分的にであれデータで裏付けられてしまい、やはりそうか、というか、もっと頑張れよ、という気になります。
別々の人が書いた章を並べているので、各章の個性は様々です。第2章や第5章は、文科省と各種アクターとの接触の様相を、他省との比較で描き出しており、出色の出来栄えです。第6章は、座席表という視点から旧文部省と旧科技庁の統合を分析しており、大雑把ですが野心的で楽しめます。一方で、最も長い第7章は、ほとんど年表を書き下しただけの中身で、得るものは何もありませんでした。
他の章も、出向人事など、省内の人事マニアでもここまでは調べないだろうといった詳細な分析が楽しめます。全体的に、文科省に詳しい人も、そうでない人も(そうでない人が興味を持つかどうかはわかりませんが...)、いつもと違う視点から文科省の一面がわかる良書だと思います。