教育長ブログ

文科省→起業→熊本市教育長。45歳。悪性リンパ腫サバイバー。

若林恵『次世代ガバメント』を読みました。

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何かと評判がよいので、読んでみました。紙版は既に売り切れなので、電子書籍で。

次世代ガバメントは、「大きい政府」でも「小さい政府」でもなく「大きくて小さい政府」。つまり「『サービスは極大』だけれど、それを運営する『行政府は極小』を目指す必要がある」というのが本書の主張です。そのための鍵がデジタル技術であり、また、行政府はすべてのサービスを提供するのではなく、サービス提供のプラットフォームになる必要がある、と述べています。

本書の指摘する「多様化に行政サービスが追いついていない」というのは、仕事をしていて日々感じます。学校の先生方も日々感じているのではないでしょうか。本書では、画一・大量・安価に供給するこれまでの行政サービスの代表例として学校給食が出てきます。確かに、これまでのやり方で一人一人のニーズに応えようとすれば、際限なくコストと人手が必要になります。これは、給食に限らずすべての学校の活動に、学校に限らずすべての行政分野に当てはまるでしょう。

そうすると、本書のいう「サービスは極大」というのは、多額の給付をするという量的な極大ではなく、きめ細かい、最近の教育用語でいえば「個別最適化」されたサービスという質的な極大なのだと思います。それを可能にするのがデジタル技術だというのは納得ですし、それが誰一人排除しないインクルーシブな社会を実現するのだというゴール設定は見事だと思いました。

ただし、そんなバラ色の未来を実現するためには、プライバシーに関してはかなりの部分を共有する必要があり、意識の転換というか「慣れ」が必要であることもわかります。デジタル技術というのは「プライバシーを教えてくれたら、あなたに合ったサービスを提供しますよ」というやり方ですもんね。フィンランドスウェーデンでは国民全員の給与が「公共財」として公開されているそうですが、そんなの日本ではとても無理、と素直に思ってしまいます。それをどうクリアするかが今後の課題ですね。

方向性とともに課題も読み取れる、評判に違わぬ良書だと思いました。