教育長ブログ

文科省→起業→熊本市教育長。45歳。悪性リンパ腫サバイバー。

岡本薫著『教育論議を「かみ合わせる」ための35のカギ』を読みました。(本の感想と少しの思い出)

少し古い本ですが、大空小学校の木村泰子先生と麹町中学校の工藤勇一先生が共通して影響を受けたということで、最近また話題になっている本です。

15年以上前の本ですから、当時と今とでは状況が変わっている部分もありますが、今でも変わらずに教育論議の課題として残っている部分が多々あると感じます。

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例えば、教育論議では、何かあるとすぐに「連携」という言葉が出てきますが、

"あらゆる『連携』には、その前提として明確な『契約』(共通理解と合意)が必要である。"(p.85)

という指摘はもっともです。もちろん関係者・関係機関が連携することは必要ですが、責任関係が曖昧なままでの連携は非常に危険だということは改めて肝に銘じたいと思いました。

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"「心を良くすれば子どもたちの問題は解決される」という発想は、ある意味で「精神を鍛えればアメリカに勝てる」と言って「システム改革」を怠った悪しき精神主義と同じ"(p.91)

という指摘も、私自身、日頃からよく感じます。この仕事をしていると、何かある度に「心の教育」や「職員の意識改革」が大事という話になります。私は極力、そうじゃなくて仕組みを変えましょうよ、意識や善意に頼らないシステムにしましょう、という話をしているつもりです。

いじめでも、体罰でも、不祥事でも、一人ひとりの高い意識だけに依存しない、対処と再発防止の仕組みを、必要なら予算をつけて作ることが大切だと常に言っています。給食費の公会計化などはその代表例でしょう(そもそも職員に現金を扱わせないのが一番の不祥事防止策です)。

それでも、「やっぱり最後は心の教育ですよね/意識改革ですよね」みたいな話が出てきて、「ああ、こうやって日本は戦争に負けたんだな」と思う場面が、週1回くらいあります。

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実は、岡本薫さんは、私が文部省に採用された時に、面接をして頂いた方です。当時は室長だったと思いますが、私が書いた面接用の文章(内容は忘れてしまいました)を読まれると、「君が書いていることは、この段落までは正しいが、ここから先の、最後の部分が間違っている。」という、いかにも岡本さんらしい論理的な指摘を下さったことを覚えています。

その後、「君ね、文部省職員なんて馬鹿ばっかりだから。ほら、この部屋にいる連中とか、廊下を歩いている奴とか、見てごらん。馬鹿だろう?」と聞かれたのです。私は「はい」とも「いいえ」とも答えがたく、「は、はあ...」と言うしかありませんでした。それでも採用して頂いたわけですが、今では面接でそんな質問できませんね...。

 

※ 本書は既に絶版ですが、出版元の明治図書で時折、オンデマンドで復刊をしているようですので、ご興味のある方は検索してみてください。

 

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