福島創太著『ゆとり世代はなぜ転職を繰り返すのか?』を読みました。
福島 創太さんに、ご著書『ゆとり世代はなぜ転職を繰り返すのか?』をご恵贈いただきました。
「やりたいこと」を突き詰め、仕事を通じて自己実現する「自律的キャリア」を目指すべきという考え方は、もともと社会が若者に求めたものでした。しかし、その考え方では、就職や転職に失敗した時には、理不尽なことにすべて「自己責任」にされてしまいます。本来、社会にも責任があるし、社会が若者をサポートすべきではないか、というのが本書の主張。
確かに、かつては「就職氷河期」といった言葉がありました。そこには、たまたま不況の時に就職活動をするので厳しいというニュアンスがあり、少なくとも、就職できないのは学生の自己責任だけではなく、去年より採用枠が少ないといった企業側の都合もあると認識されていました。
ところが、「自分らしいキャリアを追求する」ことが就職活動だとすると、就職に失敗したら、「もう一度自分を見つめなおそう」などと、自分のせいにされがちです。単に採用数の問題で去年なら受かっていたのかもしれませんが、そんな話はどこかに行ってしまいます。それが、巧妙に仕組まれた「自己実現の罠」。とはいえ、仕組んだ側がどこまで意図的なのかはわかりませんが。
この本を読んで考えたのは、私もいつも「主体的に考え、行動できる人間」になろうなどと言っていますが、そのこと自体が社会から若者への要求であり、現代ではそのような生き方こそが「敷かれたレールの上を歩む人生」なのかもしれない、ということです。考えてみれば、教育長が言ったとおりの大人になるなんて、まさに敷かれたレールに乗った人生ですよね...。
まあ、時代に合わせたレールを敷いてあげることも、著者のいう社会の責任の一つだとは思います。