教育長ブログ

熊本市教育長(H29.4~) facebookの投稿から主なものを転載しています。 https://www.facebook.com/hiromichi.endo

どうしても二大政党制にしたいなら、秘策がある。

最近ある所で政治学を教えていて、その中で選挙制度の話もする。動画講義なので雑談ができないのが残念だが、仮に教室で教えて雑談ができるなら、この話をしたいと思っている。

 

それは、「二大政党制になりやすい選挙制度は?」という話だ。普通は、小選挙区制という答えが返ってくるはずだ。でも実は、もっといい方法がある。

 

一般的に、小選挙区制は二大政党制になりやすく、比例代表制は多党制になりやすいと言われる。これはある部分では正しく、ある部分では正しくない。

 

比例代表制は、小政党も議席を取りやすい制度なので、多党制になりやすい。これは確かだ。「民意を鏡のように反映する」制度と言われ、世論が多様であれば選挙結果も多様になる。

 

一方で小選挙区制は、アメリカのように二大政党制になる場合もあるが、日本の衆議院のように一党が大勝する可能性もある。日本以外でも、たった一回の選挙で、169議席あった与党がわずか2議席になったという歴史的惨敗の例もある(1993年カナダ総選挙)。1位しか当選しないので、わずかな差が大差になる。いつも二大政党制になるという保障はないのだ。

 

しかし、小選挙区制とは別に、ものすごく二大政党制になりやすい選挙制度がある。それは、定数2の中選挙区制だ。イメージとしては、昔の衆議院中選挙区制で、全部の選挙区を定数2にしたような感じ。今の参議院の選挙区(都道府県単位)で、改選数が2の場合も同じだ。

 

この制度にすると、1人は確実に第1党が当選する。もう一人は、第2党が当選する可能性がかなり高い。どんな選挙区でも、第1党が2人当選するのはかなり難しい。実際、過去の参議院選挙でも、定数2の選挙区は、かなり二大政党に近い結果となっている。 

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 選挙全体は激動だったこの時期を通じて、定数2の選挙区は抜群の安定感を保っている。よく見ると第1党は入れ替わっているが、議席差は小さい。つまり、政権交代が可能だが、極端な大勝・大敗はしない二大政党制がここにある。

 

このように、選挙制度を「定数2の中選挙区制」にすれば、かなりの確率で人為的に二大政党制を作り出すことができる。例えば、衆議院小選挙区を2つ合わせて、このような制度にしてみたらどうか(一票の格差をならすため、区割りは変えた方がいいと思うが)。少数政党の意見はどうするんだ、という声に応えるには、今まで通り比例代表の部分も残せばいい。

 

もちろん、二大政党制を作るために特化した制度なんて、選挙制度の「常識」からはかなり外れた制度だ。ただ、今の日本のように民意が極端に振れやすい状況の中で、安定した「政権交代可能な二大政党制」を作るには、案外いい制度なんじゃないかと思う。もし実現すれば、世界からも注目される(好奇の目で見られる?)選挙制度になるに違いない。